2016年03月23日

熊木杏里最新アルバム『飾りのない明日』全曲レビュー

熟成させたおかげで少し遅れたが、恒例となっている熊木杏里ニューアルバムの全曲レビューを。
9番目のアルバムである『飾りのない明日』は、CDだけのタイプCとは別に、タイプAとタイプBにはそれぞれライブDVDがついていて、そのレビューは既にアップしている。
タイプA特典『生きているがゆえ』ライブツアー東京DVDレビュー
タイプB特典『歌が姿を見せる日』DVDレビュー


肝心のCDは、ヤマハミュージック移籍後初にして、原点回帰した印象がある。
デビューアルバム『殺風景』は、殺風景に見えるけれど本当は色とりどりなんじゃないか、という意味が込められていたらしいが、本作は、今日と明日は違う、これから迎える飾りのない明日を自分なりに飾りつけていこう、といったメッセージである。

1.『ハルイロ』☆☆☆
発売前の熊木杏里ラジオ『夢のある喫茶店』で初めて聴いた。今までになかった、キャピキャピ系だが、ラジオのエンディングで流れると、妙にマッチして良かった。
聴き込まないと良さがわからない曲が多い中で、キャッチーで、一曲目には相応しいと思う。

ーー邪なボーダーのTシャツ、泡みたいに手を繋いだ。

2.『くちびるの魔法』☆☆☆
一転して、しっとり系のラブバラード。楽曲は悪くないが、ちょっと長くて(6分近い)、だれる。
ひとつだけどうしても気になるのが、メインで使われている、【数字じゃ出せないのが愛】【数字じゃ言えないのが愛】。これが、よくわからない。熊木杏里で多い、よくわからないけど良い!パターンではなくて、よくわからなくて駄目!
心の中から湧き出てきた独特のフレーズではなくて、取ってつけたような印象がある。
アルバム全体で「言葉」ではないんだ、という詞が多いから、あえて「数字」にしてみたような…。
数字云々ではなく、「くちびる」絡みで膨らませるべきだったのでは。

ーーくちびるの魔法で声が止まって、向かい合せの心臓だけが、ふたり動かす。

3.『ライナーノーツ』☆☆☆☆
ライナーノーツとは、CDにつく解説文のこと。
この曲調、知ってる、と思った。誰の何という作品かは思い出せないが、昭和的というか、ある種の音楽へのオマージュで作られていると思う。
ですます調の詞も良い部分が多く、【希望が持てなくても生きてはいけるんだと、今なら励まさないで伝えてゆけるのです】とか、【嫌気がさした時も取り替えられる自分じゃない。恋人よりも上手に付き合ってくものなんだと思うのです】あたりは、さすが。
探しもの(無くしもの)に関しては、尊敬していると言う井上陽水氏の『夢の中へ』を思い出させる。

ーー無くしたものは、探さないと見つかるものですね。

4.『飾りのない明日』☆☆☆
アルバムのタイトル曲。MVが先行公開されたため、最初に聴いたのだが、今回のアルバムは駄目かも、と不安になった。
曲も良いところが全然ないし、詞の乗せ方が不自然だと感じた。
しかし、曲を抜きにして詞だけを読んだら、物凄かった
僕は常々、素直に、率直に、ストレートに生きたいと思っていて、そういう面のある熊木杏里を好きになったのだが、彼女はここまで吐露するのか、と打ちのめされた。
このアルバムも、オリコンデイリーで20何位だったかで、はっきり言って、メジャーではない。売れているとは言い難い。
おそらく引く手数多で移籍したわけでもなく(事情は知らないが)、結婚出産を経て、もう終わりにしてもいいんじゃないか、という思いもなかったわけではないだろう。
しかし、【奇跡を夢見るほど子供じゃないことくらい分かってる。惨めなくらい私はもう現実にいるけれど、答えを出せるような大人じゃないことも知っている。望むことがある以上、この席を空けるわけにはいかないんだ】
なんという決意表明だろう。
そして、【光の中にいても輝けるとそう信じたいから、星の中に私をもう探さないで行くよ。姿が見えなくなりそうな時は目を閉じてみればいい。どこにもない、どこにもない、飾りのない明日へ行こう】
光の中、星の中とは、スターのひしめく芸能界、音楽業界。その中でも輝けると信じたいが、埋もれて自分が見えなくなっても、目を閉じて自分を見つめれば輝く自分がそこにいる。
ツイートしたが、夢は叶うだとか、努力は報われるだとか、現状維持ではなく成長せよだとか、薄っぺらいことを言葉だけで言われると、うるせぇ馬鹿!と思うけれど、こういう伝えられ方をすると、本当に身に沁みる
【見慣れた景色が嫌いなわけじゃないことくらい分かってる。温かな日々が今も手のひらにある】と、現状が嫌なわけではないところも、今の僕に通じるものがある。このままで良い、このままでも良いのだけれど…。

ーー飾りのない明日へ、きっときっと行けるんだ。

5.『白き者へ』☆☆
赤ちゃん(息子)の白い肌を見て思いついた詞のように思う。
このアルバムの特徴だが、これも、心地悪いわけではないが、かったるいというか、長い。Aメロ、Bメロ、サビと、どこかにひとつは、おお、この音の並びは良いな、と引っかかるポイントがほしい
ライブで聴いたら、一気に評価が変わるかもしれないが。

ーービンの底に沈んだ不純物みたいに罪が増える。

6.『夏の日』☆☆☆☆
5つ星にするか、迷った。限りなく5つ星に近い4つ星で。
夏色というフレーズから始まるが、『ハルイロ』から始まったアルバムの中で、タイトルを『夏色』とか『ナツイロ』とかにしなかったのは正しい
『白き者へ』とは違って、これは、AメロもBメロもサビも、ちょっとずつ良さがある
歌詞も、ところどころ良い。
しかし、あと一歩足りないかなぁ。これまでの5つ星の作品との整合性を取るため、やむなく…。

ーー君がいないからどこかに、ぼくのいない君がいる。

7.『幻』☆☆☆☆☆
一方、迷いながら5つ星にしたのがこれ。最初にアルバムを通して聴いた時は、1つ星か良くて2つ星かな、と思ったが、聴き込むうちに評価が急騰
しっとり系バラードでかったるいと表現することもできるのだが、このしっとり感がとても心地良い。独特のムードのある一曲
ラジオで、自分に合うマイクが見つかって、そのマイクが使えるスタジオの時に『幻』の収録を行った、というようなことを言っていた。当たり前だが、声も良い。

ーーうやむやな風ひとり抱きしめていたのに、君にはなぜ伝わっちゃうんだろう。

8.『灯び』☆
幕間の一曲。『幻』で上げすぎたムードを一旦落ち着かせ、終盤の2曲に繋ぐためのもので、評価の対象外というか…。

ーーこの火を消してしまわないで、あなたが灯した祈りを。

9.『今日を壊せ』☆☆☆
トランペット?が使われていて、このアルバムの中では珍しく、真っ直ぐ元気をもらえる感じの応援ソングになっている。

ーー穏やかになったねなんてさ、言われると少し、憂鬱になるんだ。角ばった石が水の流れで丸くなったみたい。それはいい事かい?

10.『忘れ路の旅人』☆☆☆☆☆
CDを聴く前に、DVDから見た。
ライブのアンコールのラストで、この曲が初披露されたわけだが、弾き語りが始まる前の曲紹介コメントが実に良かった。
語る言葉自体もそうだが、表情というのか、オーラが凄くて、想いを込めるってこういうことなのか…、と思った。
これを見て聴いて、泣かない人は人間として認めたくないとすら思う。
曲は、田舎のことを歌っているだけあって、沖縄的で、Coccoが似た曲を作っていたような…。

ーー情けのない時代の中で閉ざしながら生きているなら、これ以上ないほど情けなく生きたみたい。そう思った。

飾りのない明日(TYPE-A)(CD+DVD) - 熊木杏里飾りのない明日(TYPE-B)(ALBUM+DVD) - 熊木杏里飾りのない明日(TYPE-C) - 熊木杏里

↑アマゾンを見たら、今日(2016年3月23日)現在、一人しかレビュー書いてない…。
しかも、評価の対象外と断定し唯一の1つ星にした『灯び』を、特に良かった、と…。人の好みは違いますなぁ。
posted by beaver-life at 06:15| Comment(1) | TrackBack(0) | 熊木杏里 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
4曲目は名曲でっせ。
Posted by at 2017年04月29日 13:39
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